全麺協素人そば打ち紋別大会

二段位審査員として

戻る

トップに戻る

 平成17年9月18日(日)・19日(月)に北海道紋別市で「第2回全麺協素人そば打ち初段位・二段位認定紋別大会」が開催されました。

 主催は紋別そばと道具を作る会(会長 鈴木正光)が中心となった実行委員会で、鈴木氏からの要請により段位認定審査員として紋別市を訪れました。

 以下に、大会の模様と感想を紹介します。

※ 下記ブログでは大会のほか旅日記も掲載していますので併せてご覧ください。

 道楽手打ちそば  (http://blog.goo.ne.jp/seisui-goo/)

 会場は、紋別市内の紋別渚滑市民センターです。

 18日が二段位、19日が初段位と11月に福井で開催される全日本素人そば打ち名人大会の予選会です。

 画像は2段位認定会の開会式です。

 認定会の前に、二段位受験者の団体戦を行いました。
  これは、実行委員会会長の鈴木氏の考案で、「認定会に臨む前に、受験者同士がチームを組んで認定会で使用する打ち台などの道具やそば粉を練習代わりに使用することにより、緊張感が和らぎ実力を発揮できるのではないか」というものだ。
  おまけに、審査員チームも出場し、審査員の実力も公開しようというのだから、審査員にはプレッシャーをかけることになる。
 急遽、道外からの審査員4人で出場することになった。
 左から山下義宣(三田永沢寺そば道場)、寺西恭子(江戸流手打ちそば鵜の会 常任理事)、小笹 伸(あさひそば打ち道場もえぎの)、私阿部成水(さいたま蕎麦打ち倶楽部会長)

 団体戦とは、4人でチームを組み(1人以上女性を入れる。)、水回し、こね、延し、切りの4工程をたすきを渡しながらリレーするもので、審査員はそれぞれ個別に審査するので、目が離せない。

 今回、私はそばを打つという予定が無く、道具は一切持ってきていないので、道具の要らない”水回し”を担当した。

 折角の機会であるので、先に鉢に水を入れる方式で行った。

 私の後の”こね”は小笹氏が担当して、延しは寺西氏だ。

 流石に第8代 全日本素人そば打ち名人だけあって、美しい打ち方は観客のみならず、出場者の注目を浴びる。

 因みに、団体戦の難しさは、次の選手にどのような状態で送るかで、逆に、受ける側は、他人の仕事を途中から引き継ぐので、延しにしても切りにしても簡単ではない。

 切りは山下氏が担当で手際よく捌き、14組中トップで終了となり、先ずは全員4段の2段位審査員チームの面目躍如というところか。

 団体戦終了後直ちに二段位審査会を開催する。

右から、 
守田秀生(幌加内そばうたん会副会長)
丸山勝孝(奈井江そば道光会事務局長)
小笹 伸(あさひそば打ち道場もえぎの)
寺西恭子(江戸流手打ちそば鵜の会 常任理事)
阿部成水(さいたま蕎麦打ち倶楽部会長)
山下義宣(三田永沢寺そば道場)

 今回の受験者は75人で、15人ずつ5組であるが、一度に15人を審査するのは正直しんどい。

 皆、真剣そのものであり、その熱意に応えるためにも慎重な採点を心がける。

  特に、”切り”は包丁のブレが無いか後ろから丹念に見て回ったが、終了した出場者からは、「一人後ろから見て回る審査員がいる。」と噂になったようだ。

 

審査結果発表の前に各審査員が講評する。

私の全体の感想は後述のとおりであるが、講評では特に水回しのことについて触れた。
 
全体に水回しの技術不足が見受けられ、完全に水が回らないうちに捏ねに入ってしまい、シットリとした良い生地になっていない。
 
水回しとこねで良かった受験者は3人程度であった。
 この大会の粉は、きめ細かく挽いてあるので、つなぎを2割も入れれば手抜きでも繋がるが、粉が少し粗くなればほとんどの受験者が満足に打てないのではないかと思われた。

 翌19日(月)は名人戦予選と初段位認定大会である。

 この日は、審査係として、段位認定採点ソフトを開発している塚越氏とともに採点集計を担当した。

 昨年、さいたま大会では、塚越氏がエクセルで作成したソフトを利用したが、新ソフトはアクセスで処理するもので、使ってみた感じでは非常に使いやすくトラブルもない。

 今後、このソフトを全麺協公認にして全ての大会で使用することになるだろう。

 初段位の審査終了から審査結果発表までの間、寺西氏と山形のふるさと寒河江そば工房の大沼氏のデモンストレーションがあった。

 寺西氏は二八1kを”江戸打ち”で、大沼氏は二八1.5kを山形地方の”丸延し”でそれぞれ違ったうち方を同時に見学するものだ。

 大沼氏の打ち方を解説しているのは、同工房会長の松田氏である。

 大沼氏のそば打ちは以前から力強いが、1.5kの丸延しとなるとさらに気合が入るようで、寺西氏のソフトで美しい打ち方と対照的で、正にそば打ちの”柔”と”剛”か。

 いずれにしても、審査結果発表まで受験者は精神的に長い時間を過ごさなければならず、このようなイベントは効果的である。

 さいたまでも採用を検討する必要なあると感じた。

二段位認定審査を終わって

審査結果は、70人受験(4人欠席)中57人合格(合格率81%)である。

今回の審査を担当しての感想は以下のとおりである。

1 審査対象人数について
    今回、抽選漏れ者を防止するため74人の受験者を15人1組にして5組としたが、15人を審査す   るのはかなり無理がある。
    一人の審査員が見て回るのは限界があり、審査員は自ら認めた内容しか審査対象としないので(   他の審査員が「○番はこういうミスがあった」といっても、見ていないものを減点出来ない)、審査     員を増員しても解決は出来ず、やはり、10人が限界ではないか。

2 衛生・準備の採点について
   段位認定審査の方法については、地方審査員研修会でチェック項目や審査方法等を学んでおり、  衛生準備の項目もチェックすべきところは統一されている。
   しかしながら、段位認定会が数多く行われてきて、受験者も情報を得ており、開始の合図と共に、全  員が、手洗い後、麺打ち台、木鉢、麺棒、 挙句は包丁の清掃までしてから水回しに入るという光景を  5組も見てるとうんざりしてくる。
   審査員の中には、この行為をつぶさに観察して、例えば「手洗いと道具清掃が逆だったので、減点」  とかしているようだ。
   食料品を扱うので粉に触れる前の手洗いは必須だが、全ての道具までパフォーマンスで清掃する   のはいかがなものか?
   使用する道具類は事前の準備で行われているはずで、開始後、麺棒や道具に汚れ等があればそ  れを減点すればよいのではないか。
   後始末がきちんとできているかどうかは重要であるが、開始後の清掃行為 は減点対象にせず、そ  の分、水回し等技術的分野に時間をかけたほうが効果的だと思う。

3 受験者の技術について
   今回審査した二段受験者について、シビアな見方をすれば全般的にレベルが低いと感じた。
   どうも、失敗を恐れて全体的に小さくまとまった打ち方をしている。
   水回ししかり、地延しも丸出しも4つ出しも小さく、それを無理やり切り幅を出すために延ばしている  のが目立った。
   切りもしっかりと小間板の枕に沿って切れている者も少ない。

4 制限時間について
   今回の審査で、意外と時間切れ者が目立った。
   それも、技術点で上位に位置している受験者が審査終了の合図の後に自分の終了宣言をしたこと  で 不合格になった者もいる。
   ミスを重ねても基本的な技術がしっかりしていれば落ちることは無い。まして、切りも終了し、後片付  けをしている最中に審査終了の笛が鳴ったのでは元も子もない。
   後片付けが悪くてもせいぜい2〜4点の減点程度であろうから、もったいない話である。10秒前の   コールがあったらとにかく終了宣言をすることが肝要である。
   時間切れはシビアであり、規定の時間に終了しなければ失格なので審査員もどうしょうもない。

 こうして、第2回全麺協素人そば打ち初段位・二段位認定紋別大会は成功裡に終了したが、地元の紋別そばと道具を作る会をはじめ、道内各地の友好そば打ち愛好会のメンバーが協力して運営に携わっている様子を拝見して、手打ちそばの健全な発達のために開催する段位認定会は、受験者のみならずスタッフを務める多くのそば打ち愛好者の交流の場ともなっているという大きな効果を生んでいるのである。

戻る

トップに戻る