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 明けましておめでとうございます。

 皆様におかれましては2006年の新しき年をお健やかにお迎えのこととお慶び申し上げます。

 今日元旦のさいたま市の天候は肌寒い曇りですが、年越しそば打ちの疲れもなく健康でこのご挨拶ができる幸せに浴しております。

 私どもが子供のころに本や漫画などにより描いていた21世紀は「科学が高度に発達し、自然災害や病気も克服し、人間並みのロボットの 出現や宇宙旅行などが簡単にできて、戦争もなく人類が皆豊かで平和な世界」でした。
 しかしながら、自然災害を克服するどころか、軍事・経済で世界をリードするアメリカでさえ、テキサス州を襲ったハリケーンの前にはな すすべもなく、逆に、自然を無視した無理な都市化が被害を甚大なものにしてしまったようです。 一昨年末のインドシナ沖の大津波の被害救済もままならぬうちに、昨年10月のパキスタン大地震では、未だにテントにも入れない難民が 多く緊急な救済の手が求められています。

 一方、地球の温暖化は確実に進行し、危機状態になりつつある中、昨年末モントリオールで開催された第1回京都議定書締約国会議では、 世界最大の二酸化炭素排出国である経済優先のアメリカは依然として消極的態度であり、世界各国から早期の京都議定書復帰を求められて います。

 また、イラクでは徐々に民主化が進められていますが依然としてテロが絶えず、というよりロンドンでの地下鉄爆破テロでみるように、テ ロを撲滅するためのイラク戦争は、逆にテロを増大させている結果となっているようです。

 私は、数年前のごあいさつから、近年の行き過ぎたコスト・効率優先の競争社会に警鐘を鳴らしてきましたが、昨年もその顕著な事件が幾 つも起きていますが2件取り上げてみます。

【JR福知山線脱線転覆事故】
 代表的なのは4月に起きたJR福知山線の脱線転覆事故でしょう。 直接の原因は運転士が制限速度超過ですが、そこに至った原因は明らかに厳密すぎる時間管理や運転士など鉄道職員の労働条件などです。 報道等によれば、この運転士は停止線オーバーなどで1分半の遅れがありそれを取り戻すためにスピードを上げたのではないかということ です。

 たった1分半を取り戻すために107人の尊い命が失われたなんて!
 1分半とはどのくらいの時間でしょう。
 笑われますが、昔の即席ラーメンもできません。

 ATSの問題とか安全のための対策とか色々やっているようですが、どんなことをしても人間がゆとりを 持っていなければ事故は防げませ ん。

 私は、この事故は運転士の責任にするにはあまりにも重く、乗客の安全を無視して少しでも早く少しでも効率よく利益を上げるというJR 西日本(毎年相当数の乗客がホームに転落し、その度に電車が大きな遅れを蒙っているにもかかわらず転落防止柵を設置しようとしないJ R全体がそうですが・・・)は大きな責任がありますが、少しの遅れも許さない社会(私たち)が重く受け止めるべきだと思います。

 僅かな時間といえば、昨年末、みずほ証券の誤発注による株取引では、数分で400億円の損失となったそうですが、そのような恐ろしい社 会は異常ではないでしょうか。

【耐震偽装事件】
 もう一件は、現在も国や自治体までも巻き込んで大騒ぎとなっている耐震偽造事件です。
 姉歯元一級建築士が建築確認申請の中で構造計算を恒常的に偽っていたものですが、それを知らずにマンションを買わされた人々の怒りや 悲しみは言葉では言い尽くせないかもしれません。

 私のそば打ち仲間にも多くの一級建築士の方がおりますし、私が埼玉県で新都心建設に携わったときに多くの一級建築士との出会いがあり ましたが、その方々は、一級建築士という専門技術職に誇りをもって取り組んでおり、常に「後世に残る素晴らしい建築物を作りたい」と の意識に溢れており、建物で一番重要な構造で安全性を無視した偽装を行うなどは考えられないことです。

 残念なのは、設計で偽装があっても施工時に多くの技術者が関わっていながら見抜けず(知っていながら?)完成までしたことは、設計・ ・施工ともに偽装に関与していたと思わざるを得ません。

 この事件の示すものは、コスト優先・人命非優先であり、いかに他の競争相手を価格面で差をつけて多く売り切るかです。

 そして、社会が、”少しでも安く、少しでも早く”を求め過ぎているからではないでしょうか。

【自殺者の急増】

 このような効率・コスト優先社会では、当然、多くの付いていけない人々が出て、中には自殺に追い込まれる人も多くなっています。

 1986年に25,667人のピーク以降21,000人台を維持していたのが、1998年に年間自殺者が3万人を超え、その後も毎年 3万人以上の自殺者があります。
 2000年の年齢階級別死亡率では、55-59歳(人口10万人当り72.5人)をピークとする極めて高い自殺死亡率の山が出現しており、働き盛 りの多くの人たちが自殺に追いやられていることが分かります。

 これは明らかにバブル崩壊後の効率・コスト優先社会の犠牲者であると私は考えます。

 政府は先月末に開催された「自殺対策関係省庁連絡会議」で年間3万人を超える自殺者を今後10年間で5千人減らし、2万5千人前後と する目標を盛り込んだ対策を決め、全都道府県に「自殺対策連絡協議会」の設置を促すほか「自殺予防総合対策センター」の設置も進める とのことですが、そんな対症療法では防止できるはずはなく、ゆとりのある優しい社会の実現なくして自殺者の減少は望めないのではない でしょうか。

 新年早々から明るくない話題で恐縮ですが、身近な明るい話題も数多くあり、そのうち2件を紹介します。

 一つは、私の30年来の友人で埼玉県の学芸員をしていた友人が期せずして私と同様県を早期退職し、長野市の大岡という寒村(表現が正しいかな?)に山林・田・畑と古民家を購入したということです。

 公務員として働いていれば安定した生活ができるのにと多くの人が心配するのを横目(私も同じようなことを言われましたが)に家族とと もに移住してしまいました。

 そこは、日本の棚田100選に選ばれている美しい風景のところですが、反面、棚田は大きな農機が入らず、ほとんど人手での農業となる ことですので、60歳を前にしての就農は相当容易ではないと思われます。

 しかしながら、海外遠征などの経験も豊かな根っからの岳人であり、また、植物の専門家でもあり心身ともに強靭な友人のことですから必ずやり遂げて見せる と信じております。

 彼らはこの農場で循環型の農業を営みながら、「自然体験」「農業体験」で子供たちをはじめ多くの人たちを迎え入れることを考えています。

 早速、私どものさいたま蕎麦打ち倶楽部でそばの栽培を依頼し、種まきや土寄せ、さらに、地元の皆さんとのそば交流を行うなどで何度か訪れています。

 そば栽培のほうは、台風の風による影響か他の原因かとても豊作とはいかなかったようですので、再挑戦に期します。

 いずれにしても、都会から田舎へ移り、自然を相手に循環型農業を営んでいる家族に心からの声援を送りたいと思います。

 さて、もう一つは、昨年と同様私たち家族がJリーグ発足当初からサポーターとして応援している浦和レッズの活躍です。

 もう一昨年になりますが、Jリーグ後期優勝を果たした我らが浦和レッズは、今度は年間王者と意気込むもシーズン最初の連敗が響いて出足が悪く、とても優勝は望めないと思っていたら後半のがんばりで結局は2位になりました。

 さて、天皇杯は、過去何度か準決勝まで残って、決勝のチケットを早買いしたこともありますが、決勝まで進めず、無駄遣いに終わりまし た。

 今度もどうかと期待と不安でしたが、流石にチケット早買いはせずにいたところ決勝進出です。

 息子は友人とチケットを手に入れ、現在、国立競技場に向かっていますが、私たち夫婦は彼らに応援フラッグを託し、炬燵で一杯飲みながら テレビ観戦と洒落込みます。

 さて、今日の結果は・・・・・・。試合開始までにこの年賀状を仕上げなければなりません。

(このページをアップしてから、天皇杯が始まり、なんと清水に快勝しJリーグになっての初優勝を果たし、3時50分現在、国立競技場は興奮に沸いています。私も行きたかった・・・・)

 最後になりましたが、私自身は、ゆとりある人生を求めて埼玉県を早期退職して2回目の新年を迎えましたが、おかげさまで健康に恵まれ (正直、1回も寝込むこともなく。)、さいたま蕎麦打ち倶楽部のそば仲間や全国のそば関係者と文字通り”手打ちそば一筋”に明け暮れ ております。  

 昨年1月に埼玉県で初の「素人そば打ち段位認定さいたま大会」を開催したのを皮切りに、3月に福島県で開催された「全日本素人そば 生粉打ち名人大会」で技能賞を受賞し、8月に北海道幌加内町で開催された全麺協主催の「第1回そば大学」に参加、9月に幌加内そばま つりに参加、同月紋別市で開催された「段位認定紋別大会」で2段の審査員、そして、10月、全麺協主催の「世界そば産地視察・交流ツアー」でネパールを旅し、 ヒマラヤの麓のそば文化に直接触れることができたこと、さらに、目前にそびえるダウラギリ峰(8,167m)の神々しい夜明けなど、今まで にない感動を覚えました。
 11月には、恒例の「今市そばまつり」と「さいたま市中央区区民まつり」に出店し、12月に寒河江市で開催された「段位認定山形大 会」での審査員を務めるほか、手打ちそばの福祉施設出張訪問など、手打ちそば三昧の1年でした。

 加えて、10月に今後の手打ちそばの普及・啓蒙活動の源となる「NPOそばネット埼玉」が設立・登記となり、今月末に、最初の大事業と なる「2006素人そば打ち段位認定さいたま大会」を開催いたしますが、先ずは、この大会の成功を弾みに、「そばネット埼玉」を大き く発展させていければと思っております。

 先にゆとりのない社会について述べましたが、食においても同様なのではないでしょうか。
 テレビなどでは毎日どのチャンネルでも「超高級料理」・「珍味」・「食べ歩き」などの番組で溢れていますが、バランスの取れた食生活や手作りの料理の大切さなどの番組は稀です。
 最近テレビで見たのですが、今、宅配料理が人気があるというのです。
  お客は病人やご老人だと思いきや、子供のいる共働き世帯が主力なのだそうで、朝も晩も宅配で済ませているのです。
 理由は、家事に時間的ゆとりがなく宅配は、暖かく美味しい料理が届けられて、食事の準備も後片付けも要らず大変便利だということです。

 このような家庭で育った子供はどのような大人になるのでしょう。
 子供の健全な成長に必要なのは、母(父の場合も)の愛情のこもった手作りの料理を家族中で味わい、作り方も覚えながら育っていくのが自然なのではないでしょうか。
 さいたま蕎麦打ち倶楽部が毎年数回「親子そば打ち体験教室」を開催しますが、参加する父母から「うちの子供は蕎麦屋へ行ってもこんなにそばは食べたことがない。本当に美味しいそばですね。」 とよく言われるます。
  もちろん、食材がよいことは確かですが、それにも増して心をこめて一生懸命作ったものの味は違うことを子供は分かるのです。

 このような体験を下に、伝統食文化としての”手打ちそば”を自ら楽しみ、さいたま蕎麦打ち倶楽部をはじめ多くのそば打ち仲間とともに、手打ちそばを通じて人の輪(和)を広げながら”健全な食文化の発展”に寄与してまいりたいと存じます。

 引き続き、ご支援ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

 終わりに皆様のご健康とご多幸を心からお祈り申し上げ新年のご挨拶とさせていただきます。

   平成18年元旦

阿 部 成 水

NPOそばネット埼玉 代表理事
さいたま蕎麦打ち倶楽部 会長
全麺協段位認定地方審査員
ニッポン東京スローフード協会会員

05年3月 全日本素人そば生粉(10割)打ち名人大会で入賞する。 05年9月 全麺協素人そば打ち段位認定紋別大会で2段位の審査をする。
05年9月 長野市大岡の棚田に蒔いたそばは順調に生育していたのですが・・・・ 05年9月 長野市大岡の地元の方々との楽しい交流会

05年10月 全麺協の海外そば産地視察・交流ツアーでネパールを旅する。

ヒマラヤの麓の小集落とそば畑

05年10月 ここのそばは、そばの原種「高嶺ルビー」で、訪れたときはまだピンクの花が一面に咲いていた。
そば畑のはるか頭上には、ダウラギリ(8,167m)が聳え立ち、ここの時期としては幸運にも美しく晴れ渡った空に神々しく輝く峰を見ることができた。

ここナウリコットまでは、ヘリコプター、ここからツクチェ村まを通って飛行場のあるジョムソンまでは徒歩か馬で行かねばならない。

ダウラギリを背に、全員勢ぞろいで出発だ。

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