ふのりつなぎの蕎麦打ち
私の出生地新潟県魚沼地方で昔から広く打たれている“ふのり”で打ったそばの打ち方を紹介します。 ただ、両親が実家で食べていたそばは、自家栽培した玄そばを石臼で手挽きしたそば粉に、煮詰めたふのりをたっぷり入れ込んだ素朴なそばだったそうです。
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使用するふのりは、長岡市などの海産物商店で”そばのり”として市販されています。 使用する量はそば粉1kに対して30gが標準です。 ただし、しっかりした腰の強いそばにするにはもう少し多くする必要があります。私は、通常、そば粉1kに40gのふのりを使います。 なお、このふのりは、新しいほど煮詰めても溶けにくく、蕎麦屋さんではまとめて買い込んで古いものから使用しているとのことです。 私の経験では、購入してから1年経過した位のものが適当である。 |
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大き目のボールに乾燥したふのりを入れ、水で軽く漱ぐ。 水に浮いているふのりだけを網目の用具ですくって鍋に移す。(沈んでいるのは砂などがあるので使用しない。) |
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鍋に移したら、600ccの水を入れ、中火にかける。
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間もなく煮立ってくるので、木杓子で焦げ付かないよう、底を舐めるようにかき混ぜる。 | ![]() |
この程度に溶ければOK へぎそばは、緑色のそばが多いが、ふのりを銅鍋で煮ると緑色になるので、その色がそばに出るのだそうで、銅鍋で煮てみたが色は紫色のままだった。 これは、最近の銅鍋は錫のメッキがしてあり、緑青が出ないためらしい。 |
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新しいふのりで、溶けにくいとき、又は、 打ち上がりを綺麗にしたい時は、熱いうちに裏漉しする。 裏漉し器ををそのまま(通常は裏からであるが、)ボール等にセットし、ゴムベラで撫でるようにして漉す。 |
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今回、使用したそば粉は、北海道産ボタンの玄そばと抜き実を半々で、石臼で挽き、50目のふるいでふるったものを使用しました。 (石臼と玄そば、私の石臼挽きの師匠である、北海道の路庵岸本氏から譲り受けたもの。) |
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木鉢にそば粉(1.5k)をふるって入れる。 (木鉢は、私の手製で、材質は銀杏、直径60cm、深さ17cm) |
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入れ込むふのりの量は、そば粉の量の55%が目安であるが、これは、そば粉の含水率はもちろん、ふのりの量や粘度によっても違ってくるので、慎重に調整することが重要である。 また、ふのりは煮詰めて漉した後、完全に冷ましてから使用する。 仕上がりは、画像のようなゼリー状が目安である。 |
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ふるった粉に、ふのりを落とし込む。 最初は、用意したふのりの7〜80%を入れ込む。
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後は、普通の水回しのように、手早く粉全体にふのりが浸透するように混ぜ込んでいく。 | ![]() |
1回目の水回し後の状態。(3分ほど) | ![]() |
その後、少しずつふのりを足していくのであるが、調整は画像のように手の平にすこしずつふのりをつけながら行う。 | ![]() |
細かい部分を少し取って、棒状に練り、それを折ってみて割れが入らなければOK | ![]() |
まとめて、捏ねに入る。 最初は、粘りを出すために引き伸ばすように練る。 |
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次に、水分を表面に滲み出す感覚で、体重をかけて全体に圧力を加える。 このあたりから、ふのりの滑っこさが感じられるようになる。 |
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菊練を丁寧に行う。 | ![]() |
くくり終わりの状態。 | ![]() |
鉢作業が終わり、地延しに入る。 しっかりした固めの生地なので、体重をかけて延す。 |
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私の地延しの大きさは1.5k玉で45cmから48cmにしている。 | ![]() |
次に、麺棒を使って丸延しに入る。 | ![]() |
丸延しの仕上がり寸法は、70cmから75cmが目安である。 | ![]() |
丸延しから四つ出しを終えたところ。 概ね90cm角にしている。 |
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肉わけ後本延しに入る。 | ![]() |
田舎そばは、太目ののほうが素朴で美味しく感ずるが、このそばは特にコシが強いので、通常の並そばなみの、1.5mmの厚さで延す。
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延し終えて8枚に畳んだ状態。 生地が固いので、12枚では無理がある。 |
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より歯切れのよいそばとするため、切り幅を1.5mmで揃え、断面を正方形とすることを目指している。 使用している切り板と小間板は、木工所を経営している私の友人が作ったもの。 切板は桂材の木口の寄木で、一切化学糊を使用しないで張り合わせており、包丁の当たりも良い。 小間板は、桂の板に枕を秩父産の黒柿を付けたもの。黒柿は材質が固く、自然の風合いも良い。 |
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小間明け後のそばは、一束ずつキッチンペーパーに包んで、密封できる容器に入れて冷蔵庫に保管しておく。 | ![]() |
茹で上がりのそばです。 ふのりの特有の滑り感と、コリコリとした独特の歯切れが何とも言えません。 |
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